2か所以上の法人に勤務する場合、社会保険の加入の要否の判断方法は?

問題の所在

当事務所の顧問先様では、夫が法人成りした後に、奥様が役員又は従業員になることがある。

この場合、(当該奥様が元々専業主婦ではなく、)従来、別の会社に勤務しており、そこで社会保険に加入済であった場合、当社側で社会保険の加入の要否が問題となる。

 

社会保険は、収入(報酬)が高いほど割高担っていく計算になっているが、その計算の主旨からいくと、

「2か所以上で勤務する(=報酬を得る)場合には、2か所目(=当社側)でも自動的に社会保険の加入義務が生じる(=すなわち、両方の報酬を合算したところの標準報酬を算出し、それを両社で按分等して納付する」のが合理的→義務)

のような気がする。実際、所得税の確定申告はそのような手続きになっているし。

この点に関し、当事務所のお客様では、そもそも本業で週4日から5日勤務していて、敢えて言えば週末に経理補助をしているという方便しか言えないほど、当社側での勤務実態はほとんどないが、

① ほしい金額で月@15万円や月@25万円に設定し、社会保険に加入するとし、上の青太字の「」書きを、本業の会社と当社とで調整しているケース(B様)

② プチ節税目的で源泉所得税が生じない月@8万円に設定し、社会保険はノーケアで来ているケース(K様、F様 等)

③ ①のケースのうち、さらに(従業員ではなく)役員であるケース(T様、K様)

となっていて、特に上の②は、もしかしたら社会保険に加入する調整を失念していたのか?と不安になったので、ググって確認したときの備忘メモ。

 

結論

上の①②③とも、OK!

 

理由

まず改めて、社会保険の加入要件は以下の記事の通り:

2カ所以上の会社で雇用されるようになった場合の社会保険の取り扱いについて

2カ所以上の会社で雇用されるようになった場合の社会保険の取り扱いについて

(以下、一部抜粋)

 

2カ所とも要件を満たさない場合

勤め先が2カ所とも短時間勤務で、週30時間以上の要件を満たさない場合には、原則どちらの会社の社会保険も加入対象外です。※つまり、短時間勤務の職場をいくつ掛け持ちしようと、社会保険には原則加入対象外となります。

その場合は、従業員が個人で国民健康保険に加入する必要があります。

健康保険はサラリーマンとその家族を対象とする医療保険ですが、国民健康保険は、健康保険加入者以外の人(すでに退職した75歳までの高齢者や無職者、自営業者など)を対象としています。このため、社会保険の加入要件を満たさない従業員も、国民健康保険の加入者には該当します。

運営する保険者が市町村(または同業の自営業者による国保組合)ということになるため、加入者自らが加入手続きをする必要があるのです。

なお、年金は自動的に国民年金となり、被保険者自身が毎月月末に前月分の保険料を納付します(口座振替も可能)。

 

1カ所で要件を満たす場合

複数の会社で働いていて、どちらか1つの会社で社会保険の加入要件を満たす場合は、その会社で社会保険に加入します。

この場合、社会保険加入などの手続きや支払う保険料、受け取る保険金などについては1社のみで働いている場合と同じです。

 

2カ所とも要件を満たす場合

所属している2カ所以上の会社がいずれも社会保険の加入要件を満たす場合、会社と本人それぞれで、社会保険の手続きを行う必要があります。それぞれの手続について見ていきましょう。

本人

2カ所以上の会社で社会保険の加入要件を満たした場合は、被保険者本人が主たる事務所を選択する必要があります。具体的には、2カ所以上の会社で社会保険の加入要件を満たした事実の発生から10日以内に「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。

提出先は、選択する事業所の所在地を管轄する年金事務所です。

保険料の支払い

年金事務所では、すべての会社の給料を合算し、給料額に応じた各会社や被保険者本人の社会保険料を算定します。会社や本人は、年金事務所の計算した金額を納めます。

例えばA社から30万円、B社から10万円の給料を受け取っていたとします。また、この給料(標準報酬月額)に対応する保険料は4万円でした。

この場合、A社とB社の賃金は3:1であるため、社会保険料もこの割合で按分します。按分後の保険料はA社分3万円、B社分1万円となります。

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さらに、

>1カ所で要件を満たす場合

>複数の会社で働いていて、どちらか1つの会社で社会保険の加入要件を満たす場合は、その会社で社会保険に加入します。

>この場合、社会保険加入などの手続きや支払う保険料、受け取る保険金などについては1社のみで働いている場合と同じです。

である。

そして、戻って、その1か所(通常はそう)での社会保険の加入の要件は以下の通り:

  • の所定労働時間が常時雇用されている従業員の4分の3以上かつ1ヵ月の所定労働日数が常時雇用されている従業員の4分の3以上である者
  • また、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3「未満」であっても、以下に該当すると社会保険への加入が必要になります。
    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • (2ヵ月を超える雇用の見込みがある (注1))
    • 月額賃金(所定)が8.8万円以上
    • 学生以外(定時制や夜学等を除く)
    • 従業員が101人以上の事業所に勤めている(注2)

(注1)他の条件の結果、加入義務者の方についてはいわゆる試用期間は加入しないのはダメ、当初から加入するの主旨。https://www.biz.ne.jp/matome/2002144/#:~:text=2%E3%82%AB%E6%9C%88%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%81%A6,%E3%81%8A%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%80%82

(注2)令和4年10月より「1年以上の継続勤務が見込まれる」という条件がなくなりました。加えて、適用となる事業所規模が令和4年10月に501名以上から101名以上に変更、2024年(令和6年)10月にはさらに51名以上へ変更となるため、注意しましょう。

また、いわゆる非常勤役員は特殊で、入口では労働者でないので(権利としての社会保険には)加入「できない」のであるが、

以下の記事中にある、実質判断で加入の要否が

非常勤(兼務)役員は社会保険に加入の要否を判断する条件は?▼工事中

(以下、一部抜粋)

会社役員の社会保険資格 実際の判断材料

  • 当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか
  • 当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか
  • 当該法人の役員会等に出席しているかどうか
  • 当該法人の役員への連絡調整又は職員に対する指揮監督に従事しているかどうか
  • 当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか
  • 当該法人等より支払いを受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実費弁償程度の水準にとどまっていないかどうか

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以上を当てはめると、上の、4分の3「未満」であって、かつ、

上の① → 上の5つの○(実質は3つの○)のうち「・月額賃金(所定)が8.8万円以上」に該当するので、社会保険は加入→上の青太字の「」の対応になり、実際そうやっているのでOK!

上の② → 上の5つの○(実質は3つの○)のいずれにも該当しないので、社会保険の加入は不要で、実際そうやっているのでOK!

上の③ →
・K様の場合には、そもそも当社が本業なためOKであるが、仮に当社が非常勤役員であっても、上の6つの判断材料のうち、「・当該法人等より支払いを受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実費弁償程度の水準にとどまっていないかどうか」をクリアしているので社会保険は加入→上の青太字の「」の対応になり、実際そうやっているのでOK!

・T様の場合には、そもども本業の会社の方で、当社側での役員は非常勤役員で社会保険加入不要と判断していて、当社側では社会保険は控除ゼロなのでOK。

 

補足

大前提で、「社会保険は「強制加入」、ただし、上の例外がある。」ですが、、、、むずかしい。

 

なお、上の同じリンク先の以下の記事参照:

(以下、一部抜粋)

社会保険の加入要件

まず、社会保険の加入要件について見ていきましょう。

そもそも社会保険は「国民皆保険・国民皆年金」という日本の社会保障制度を成り立たせるために、強制加入を原則としています。

そして、社会保険が適用されている会社(適用事業所)と使用関係にあり、労働の対価として賃金を得ている人なら、国籍、年齢、賃金の多寡などに関係なく被保険者となります。

主な例外には「短時間労働者」があげられます。これはいわゆるパートタイマーやアルバイトとして働く人々のことです。

ただし、短時間労働者が一定の条件を満たす場合は、社会保険加入の対象となります。

  • 1週間の所定労働時間……同一の事業所に使用される通常の労働者の3/4以上
  • 1カ月の所定労働日数……同一の事業所に使用される通常の労働者の3/4以上

1週間の所定労働時間や1カ月の所定労働日数が3/4未満であっても、以下の場合にすべて該当する人は、短時間労働者になります(被保険者が常時501人以上の企業や、500人以下でも労使合意に基づき申出をしている企業や個人事務所の場合)。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 雇用期間が1年以上見込まれること
  • 賃金の月額が88,000円以上であること
  • 学生でないこと

出典:令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構

「通常の労働者」とは、一般的にフルタイムの正社員を指します。フルタイムの目安は、その会社の就業規則などに定められた勤務時間に基づいて考えます。

一般的には「1日8時間、1週40時間」が基準となっていることが多く、この原則は労働基準法のなかで定められている法定労働時間に基づいたものです。

パートやアルバイト社員の場合、この労働時間が保険加入の可否を左右します。

例えば、1週間の平均労働時間を40時間として、40×3/4=30、つまりその人の労働時間が週30時間以上か否か、これがひとつの基準となります。

「有期契約の従業員は社会保険に加入する必要がない」と考えている人が居るかもしれません。

しかし、契約期間の定めの有無は、社会保険の加入に直接影響しません。

例えば、無期契約の従業員であっても、1日4時間で週5日勤務なら計20時間で加入要件を満たしません。これとは逆に、有期契約の場合でも、1日8時間で週4日勤務なら、計32時間となるため社会保険に加入する必要があります。

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